人生って…

小学校3年の時、名古屋から転校生がやってきた。
四国に住む昌世たちにとって、名古屋といえば、“都会”。
ただそれだけで、彼は眩しい存在に思えた。

事実、明るくて、頭もよくて、スポーツ万能で、かっこよくて、
誰とでも気さくに話をする彼は、当然のごとく、
あっという間に、クラスの人気者になった。

そんな彼の唯一の弱点は、身体が硬いことで、
柔軟体操のときには、ひと際目立っていた。
結局、常に彼は目立つ存在で、
弱点さえも、彼のチャームポイントになっていた。

一度、昌世はクラスメート達と一緒に、彼の家に遊びに行った。

彼のお父さんは、会社の社長さんで、お金持ちらしいと
噂されていたが、実際、彼の家は上流階級の雰囲気があった。

彼のお母さんも、優しくて、きれいで、
彼に関することは全て、キラキラと輝いているような気がした。



彼は、地元の有名私立中学に入った。
公立中学に入った昌世は、別々の学校になり、
彼に会うこともなくなった。





しばらくして、風の便りに、彼のお父さんとお母さんが
病気で亡くなったと知った。

彼と妹は、別々に、親戚に引き取られたとも聞いた。



昌世には、何もできなかった。
彼の居場所すら、わからなかった。





数十年が過ぎたある日、
彼が関西で外科医をしていると、昌世は知った。

そういえば、
彼の夢は医師だと、あの頃話していたことも思いだした。
病気で亡くなられたご両親への想いも、
彼の夢を後押ししたのかもしれない。


ずっと地元に残っている昌世には、
彼と会うことはかなわなかったが、
メールを通して、彼と連絡することができた。

結婚し、子どもにも恵まれ、幸せに過ごしていること、
四国の小学校で過ごした日々が本当に懐かしいと、
そこには書かれてあった。

みんなが憧れていた、あの当時の彼、そのままが
そこにいた。



でも、本当は、あの当時のままじゃない。

つらいこともたくさん抱えてきただろう。
くじけそうになったことも、きっとあっただろう。

そんなことを微塵も感じさせない彼は、
ものすごくカッコイイと昌世は思った。


結婚し、仕事を辞め、育児と家事が中心の昌世の人生は、
どちらかといえば平凡で、ドラマティックでもない。

限りなくささやかな人生だ。

そんな自分だけれど、もう少し、
キラキラ輝けるような、自分になりたい
自分でありたい…。

ふと、そんなことを昌世は思う。




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