おばあちゃん先生

小学校5・6年の担任は、評判のいい
おばあちゃん先生だった。

歌が好きで、優しくて、
教え方も上手な、おばあちゃん先生。

もっとも、男子たちは、隣りのクラスの
体育会系の先生が、ちょっと羨ましそうだった。



おばあちゃん先生は、昌世に、

「昌世ちゃんは、
 これからどんどん伸びるから」

と、よく言ってくれた。



昌世の現状はといえば、
勉強の出来は、まあまあ…。

すごくできる子は、
昌世以外に何人もいた。


あまり自覚もなく、
訳もわからないまま、昌世は
おばあちゃん先生の言葉を
聞いていた。



確かに、おばあちゃん先生は、
教え方が上手だった。

今までの先生よりも、
授業はわかりやすかった。

昌世は、塾に行っていないので、
学校の宿題だけは、きちんとこなした。



昌世の成績は、ちょっとずつ上がった。



でも、もの凄く勉強ができる…
っていうほどではなかった。



やがて、卒業を迎え、春休みに、
おばあちゃん先生の家に
遊びに行った。


一緒に行ったのは、
いわゆる「できる」女の子たち。

何となく、そういう流れになった。


自分がその中に入ることに、
何となく違和感を感じながら、
昌世は参加した。



みんないい子ばかりで、
おばあちゃん先生も優しくて、
案外楽しかった。


おばあちゃん先生手作りの
おしるこが、妙に美味しかった。


昌世は、小豆があまり好きじゃない。
なのに、不思議と食べられた。



おばあちゃん先生の魔法かな。



おばあちゃん先生は、
どうしてこんなに、優しくして
くれるのかな…


昌世は、何度もそう思った。



答えはずっと、見つからないままだ。






やがて、昌世は中学生になった。



勉強は難しくなったはずなのに、
昌世には、よくわかるようになった。

不思議なほど、いい成績が
とれるようになった。


(おばあちゃん先生のおかげかも…)


昌世は、そう思った。



ふと、おばあちゃん先生が、
卒業式の後、教室で歌ってくれた
『浜辺の歌』を思い出した。


心に沁みる歌声だった。


昌世は、きっと忘れない。


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テーマ:ショート・ストーリー - ジャンル:小説・文学

ちびっこ村やん

村やんは、小柄で、おちょこちょいで、
目がちっちゃくて、よくしゃべる男の子だ。

名字が「村田」で、「村やん」。
男子からも女子からも、
「村やん」と呼ばれていた。


村やんは授業中、ひっそりと気配を消す。
休み時間になると、水を得た魚のように
はしゃぎ回る。


村やんのお弁当には、時々、
焼うどんや、カレーが入っている。

「やったー!今日のお弁当はカレーだぁ」と、
冷たくなったカレーを、美味しそうに食べている。


他の男子が、村やんにちょっかいを出すと、
「やめやぁ、みんな~」と、村やんは言う。

相手がたった一人でも、村やんは、
「みんな」と言う。


そんな村やんを見ていると、思わず笑顔になる。
何だか楽しくなってくる。


昌世は、村やんが大好きだった。
LOVEではなくLIKEである。(念のため)



やがて、クラスが変わり、進学先が変わり、
村やんと会うこともなくなった。




月日は流れ、昌世は、高校一年になった。



ある日のこと、

「あの人、村やんのお兄さんだって!」

幼なじみのクラスメートが、そう言って、
ある男子を指さした。


そこには、

背が高くて、イケメンで、
村やんには全然似ていない人がいた。

村やん兄は、スポーツも勉強もできる、
なかなかすごい人らしい。


昌世は、何だか複雑な気分になった。


村やんの明るさの奥の、寂しさ
…みたいなものに触れた気がした。

村やんが、今まで以上に、
愛すべき存在に思えた。



「似てないよね、村やんと…」


友達は続けた。


「でもね、
 結構仲いいらしいよ、あの兄弟。
 村やんから誕生日にもらった
 携帯ストラップ、
 お兄さん、いつも持ち歩いてるんだって…」



昌世は、何だか、嬉しかった。


ブラボー、村やん☆

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テーマ:オリジナル小説 - ジャンル:小説・文学

あっという間の初恋

昌世の初恋は、小学五年の春だった。

彼に出逢ったのは、五年のクラス替えの日。

新しい担任の先生が、

「あら?男の子の中に、一人
 女の子が混じってますよ」

と口にしたので、振り向くと、彼がいた。

髪の毛はサラサラ、大きな目はキラキラ…。

女の子と間違えられるのも、仕方ないほどの、
美少年だった。


当然のごとく、昌世は一目惚れ。

けれども、彼を思いながら
幸せな気分になれたのは、その日だけだった。


翌日、学校に行くと、
暴れん坊で、他の男子と騒いでいる、
やたらと態度のでかい、彼がいた。

俺様…キャラだった。



昌世の初恋は、わずか2日で終わった。



これを初恋と呼べるかどうかは、怪しい。
彼を“初恋の人”と呼ぶのも、ちょっと哀しい。

顔だけで判断してしまった、見る目のない
自分自身への教訓として、
とりあえず、初恋としておくことにした。



と、ここで話を終えようとしたのだが、
どうも気になることがある。



そのクラスは、5・6年と二年間続く。
先生も、持ちあがりで、2年間一緒だった。

そして、なぜか、あんなに態度の大きい彼は、
担任の先生から、大きな信頼を得るようになる。

随分と目にかけてもらっている様子が
窺えるようになったのだ。


確かに彼は、頭はよかった。足も速かった。

はきはきと、大きな声で、いつも堂々と話していた。


もしかして、昌世には、彼のいいところが
見えていなかったのかもしれない。

見た目のイメージと異なる、彼自身に、
戸惑っていただけかもしれない。



ということは、
昌世の見る目は、確かだったのかも…。

なんてことを、ふと思う。



彼がその後、どんな人生を歩んだのか、
昌世は知らない。



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テーマ:散文 - ジャンル:小説・文学

人生って…

小学校3年の時、名古屋から転校生がやってきた。
四国に住む昌世たちにとって、名古屋といえば、“都会”。
ただそれだけで、彼は眩しい存在に思えた。

事実、明るくて、頭もよくて、スポーツ万能で、かっこよくて、
誰とでも気さくに話をする彼は、当然のごとく、
あっという間に、クラスの人気者になった。

そんな彼の唯一の弱点は、身体が硬いことで、
柔軟体操のときには、ひと際目立っていた。
結局、常に彼は目立つ存在で、
弱点さえも、彼のチャームポイントになっていた。

一度、昌世はクラスメート達と一緒に、彼の家に遊びに行った。

彼のお父さんは、会社の社長さんで、お金持ちらしいと
噂されていたが、実際、彼の家は上流階級の雰囲気があった。

彼のお母さんも、優しくて、きれいで、
彼に関することは全て、キラキラと輝いているような気がした。



彼は、地元の有名私立中学に入った。
公立中学に入った昌世は、別々の学校になり、
彼に会うこともなくなった。





しばらくして、風の便りに、彼のお父さんとお母さんが
病気で亡くなったと知った。

彼と妹は、別々に、親戚に引き取られたとも聞いた。



昌世には、何もできなかった。
彼の居場所すら、わからなかった。





数十年が過ぎたある日、
彼が関西で外科医をしていると、昌世は知った。

そういえば、
彼の夢は医師だと、あの頃話していたことも思いだした。
病気で亡くなられたご両親への想いも、
彼の夢を後押ししたのかもしれない。


ずっと地元に残っている昌世には、
彼と会うことはかなわなかったが、
メールを通して、彼と連絡することができた。

結婚し、子どもにも恵まれ、幸せに過ごしていること、
四国の小学校で過ごした日々が本当に懐かしいと、
そこには書かれてあった。

みんなが憧れていた、あの当時の彼、そのままが
そこにいた。



でも、本当は、あの当時のままじゃない。

つらいこともたくさん抱えてきただろう。
くじけそうになったことも、きっとあっただろう。

そんなことを微塵も感じさせない彼は、
ものすごくカッコイイと昌世は思った。


結婚し、仕事を辞め、育児と家事が中心の昌世の人生は、
どちらかといえば平凡で、ドラマティックでもない。

限りなくささやかな人生だ。

そんな自分だけれど、もう少し、
キラキラ輝けるような、自分になりたい
自分でありたい…。

ふと、そんなことを昌世は思う。




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テーマ:短編小説 - ジャンル:小説・文学

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